研究概要 |
肺気腫と特発性肺線維症〔IPF〕は異なる疾患概念であるが、両疾患が併存している症例を時に経験する。今回、過去5年間に当院で胸部CTを施行した14,900例のなかから臨床所見及びCT所見から肺気腫並びに特発性肺線維症の症例を抽出し、疾患単独群、両疾患併存群に分類した。肺気腫単独群は37例、IPF単独群27例、両疾患併存群31例であった。喫煙者は肺気腫単独群で96%、IPF単独群で39%,両疾患併存群で86%と高率にみられ、BI>400の肺癌のhigh risk groupの数も肺気腫単独群で84%、IPF単独群で35%、両疾患併存群で86%と高率であった.原発性肺癌の併発頻度は肺気腫単独群で29%、IPF単独群で7%、両疾患併存群で41%と併存群で著明に高値を示した。肺気腫、IPF併存群におけるCT上の特徴は単独群に較べて、肺気腫所見では上肺野の小葉中心性を示す症例が多く、IPFの所見ではhoneycombingとsobpleural linesのみられる症例が優位であった。肺気腫単独群のなかで3例であったが、肺気腫経過中に下肺野に新たに間質性変化が2年間の間に生じてきていることと両疾患群の経過観察中に肺気腫の病変の変化よりIPFの病変の変化が強くみられており、肺気腫にIPFの変化が何らかの機序により下肺野に起こってきていることが強く示唆された。 これらの事実から、上肺野の小葉中心性の肺気腫患者の経過観察中に、下肺野に間質性肺炎とりわけIPFの所見がみられてきた場合、この併存群での肺癌の併発の高い危険性を考慮して、CTでの厳重なfollow upが必要である。
|