DNA-PKは触媒サブユニットのDNA-PKcsとDNA末端結合サブユニットであるKu70とKu80のヘテロ二量体からなる複合体である。DNA-PK活性は44℃の温熱処理によって失活し、15分で検出できなくなる。我々はKu70かKu80の一方又は両方の熱失活が原因であることを明らかにしてきた。 この研究ではDNA-PK複合体のKu70かKu80のどちらのサブユニットが温熱感受性であるかを調べるために、温熱処理した細胞の細胞質抽出液及び核抽出液を用いてウエスタンブロツトによりKu70及びKu80の量を測定した。 熱処理をしていない細胞ではKu70及びKu80は細胞質、核内共に見られた。このことは、細胞質で合成され、必要に応じて核内に運ばれていると考えられる。 44℃の温熱処理した細胞についてKu70及びKu80を測定すると、全細胞抽出液中のKu70の含量は5分の温熱処理で大きく減少したが、Ku80の含量は60分の温熱処理を行っても影響を受けなかった。一方、核抽出液では20分の温熱処理を行ってもKu70及びKu80の含量は共に変化しなかった。この結果は細胞質中のKu70は温熱処理に対して不安定であり、速やかに分解されていることを示している。一方、核内のKu70及びKu80はヘテロ二量体を形成しているため、温熱処理を受けても安定化していたと考えられる。しかしKu70が温熱処理に対して不安定であるために、温熱処理によってDNA-PKが失活すると考えられる。
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