平成13年度は、IVR-CTシステムを用い複雑な血行支配を有する頭頸部癌の血行動態を詳細に評価した。まず総頸動脈にカテーテルを留置した時点で、造影剤を急速に注入し、腫瘍の最大断面で毎秒1枚撮影した(single slice dynamic CT)。これにより腫瘍のvascularityなどを把握した。また従来の色素法のみでは腫瘍深部への薬剤分布が不明であるため、マイクロカテーテルを挿入した時点で、シスプラチンとほぼ等比重に調整した3倍希釈造影剤を、動注療法と同じ速度で注入し2分後に腫瘍全体を撮影した(slow infusion CT)。造影剤を注入する場合と抗がん剤を注入する場合では注入速度が大幅に異なるが、造影剤を緩徐に注入するとDSA上では同定できない。CTの優れた濃度分析能を生かし、抗がん剤注入時と全く同じ注入速度で薬剤の分布が評価できた。この方法は、腫瘍が大きい場合、正中部に存在する場合など、多数の動脈が関与する際に特に有用であり、時に動注の方針が変更となることもあった。またリンパ節転移に対する薬剤分布の確認、動注薬剤の量、割合の決定などにも極めて有用であった。腫瘍の深部や周囲の骨などに浸潤した部分については、従来のいかなる方法でも薬剤の分布を知ることは不可能であったが、本システムにより始めて明らかにすることができた。 今後は、手術施行例において組織学的所見を検討し、抗腫瘍効果の判定を大星・下里の分類に従い行う。以上の検討を通じて、抗腫瘍効果が不良な群において、手技的な要因がどの程度影響しているか詳細に知ることができると考えられ、最適な動注療法の手技の確立を目指す。
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