研究成果の概要 まずIVR-CTシステムを用い、頭頸部癌の血行動態を詳細に評価した。総頸動脈にカテーテルを留置した時点で造影剤を急速に注入してdynamic CTを行い、腫瘍のvascularityなどを把握した。腫瘍部は周囲の正常組織に比較して早期に強く濃染され、腫瘍の深部や周囲の骨などに浸潤した部分を含め腫瘍の進展範囲の評価に有用であった。またマイクロカテーテルを挿入した時点で、シスプラチンとほぼ等比重に調整した希釈造影剤を、動注療法と同じ速度で注入し2分後に腫瘍全体を撮影することにより、CTの優れた濃度分解能を生かし抗がん剤注入時と同じ注入速度で薬剤の分布が評価できた。この方法は多数の動脈が関与する際に特に有用であり、時に動注の方針が変更となることもあった。また多数の栄養動脈がある際には、増強される面積から投与量を決定することができた。リンパ節転移に対する薬剤分布の確認、動注薬剤の量、割合の決定などにも極めて有用であった。さらに、手術施行例において定量的なパラメータと組織学的所見と比較することにより、治療効果の推定が可能であるかどうか評価したところ、いずれの値も組織学的効果とは必ずしも相関していなかった。これはダイナミックCTで評価される腫瘍内灌流の状態のみが動注療法の効果に影響するわけではないことを表していると考えられた。さらに治療後の腫瘍の縮小率と組織学的な治療効果が必ずしも一致しないため、治療前後のMRI所見の検討を検討し治療効果判定におけるMRIの有用性を評価した。その結果、組織学的治療効果は治療前のMRIにおける腫瘍体積とのみ有意な相関を認め、治療前後のMRIにおける視覚的および定量的な腫瘍の変化との間には有意な相関が見られなかった。よって治療直後のMRIで組織学的治療効果を予測することは困難と考えられた。
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