研究概要 |
本研究の目的は細胞内部の特定の遺伝子、または、挿入した遺伝子の生体内の局在と発現とを検討するに際して、当該の臓器や組織を摘出せずに、非侵襲的にin vivoで事象を診る核医学的手法(ジーンイメージング)を開発する事である。研究はヒト類上皮癌細胞KB-31と、これに多剤耐性遺伝子mdr-1をトランスフェクトしたKB-G2を用いて行い、海外共同研究者のD.Hnatowichの指導のもとに、以下のような結果を得た。 1.mdr-1に対するアンチセンス(AS)、やセンス(S)などのオリゴヌクレオチドを修飾して^<99m>Tcにて標識したところ、MAG3、HYNICのいずれのリガンドを用いても活性を失うことなく、高い標識率にて^<99m>Tc-ASや^<99m>Tc-Sを得る事ができた。 2.KB-31、KB-G2のそれぞれをAS、Sとインキュベートした後に、それぞれの細胞への^<99m>Tc-MIBIの取り込みを検討(mdr-1の発現物質であるP-糖たんぱく質の機能を評価)したところ、KB-G2の《機能》はASによって、濃度に依存して、抑制された。KB-G2の《機能》はSによって変化せず、また、KB-31の《機能》もAS, Sのいずれによっても影響されなかった。この事から、ASのアンチセンス効果としての特異性が証明された。 3.KB-31、KB-G2のそれぞれを^<99m>Tc-AS、^<99m>Tc-Sとインキュベートしたところ、KB-G2に^<99m>Tc-ASのみが取り込まれ、KB-G2には^<99m>Tc-Sが、KB-31にはいずれのオリゴヌクレオチドも取り込まれなかった。この事から、ASがアンチセンス効果として細胞に取り込まれたことが証明された。 4.KB-31やKB-G2を移植したマウスに^<99m>Tc-ASや^<99m>Tc-Sを投与したところ、^<99m>Tc-ASの取り込みはKB-G2の方がKB-31よりも有意に高く、KB-G2への^<99m>Tc-ASの取り込みは^<99m>Tc-Sよりも有意に高かった。以上より^<99m>Tc-ASがアンチセンス効果として、腫瘍に特異的に取り込まれることが証明された。
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