本研究の基礎実験として、昨年度に引き続き日本白色家兎の総腸骨動脈への192-Irによる血管内照射を試みた。その予備実験として、総腸骨動脈への6Fr.のカテーテルの挿入を左総頸動脈より行なったが元々血管が細い上にカテーテルの径が太くガイドワイヤーの挿入でさえ難渋を極めた。血管内照射に用いるアプリケーターは最小でも5FR.であり、またカッティング・バルーンカテーテルも5Fr.でありこれより細いカテーテルもあるが実際には使えない状況であることが判明した。このため、白色家兎をやや長期期間にわたって飼育し血管が太くなることを予想して再度試みたが、やはりカテーテルの挿入は困難であった。結局、白色家兎でのin vivoの実験はその技術上の困難さから諦めざるを得ないと考えられた。なお本学の病理専門医に相談したところ、照射後あるいはカッティング・バルーンカテーテルで切断のみの標本を摘出して、explant法で培養して、照射群と対照群との培養細胞での薬物添加の実験は問題があるとの指摘を受けた。すなわち、培養細胞では照射の影響を受けた細胞がその性質を培養後も保っていることの証明が不可能であるという点である。この理由により、本年度は平滑筋細胞の培養から試みた。シャーレ内に培養した平滑筋細胞を、直線加速機の超高圧X線で照射することは可能あった。しかし、照射によるアポトーシスの発現、薬剤付加による実験結果と照射によるものとの比較はまだ結果が得られていない。in vitroの実験方法は血管内照射の効果を直接証明するものではないが、機序解明の一助になると思われる。現在、in vitroの実験の方法、解析を検討中である。
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