近年、脳腫瘍を含む様々な癌細胞でシグマレセプターの過剰な発現が確認されており、悪性腫瘍の診断ならびに治療の新たな標的として注目されている。これまでの研究で、新規に開発した放射性ヨウ素標識o-BON([^<125>I]o-BON)が、シグマレセプターに特異的かつ定量的な画像を与える新規シグマレセプター機能診断薬剤として有望であることを示してきたが、[^<125>I]o-BONは、さらに悪性腫瘍診断用放射性画像診断薬剤としても有用であると期待される。 本研究では、[^<125>I]o-BONの悪性腫瘍に対する特性を検討し、悪性腫瘍診断剤としての有用性を基礎的に評価した。様々な組織由来の癌細胞を用いたインビトロ実験、および、各種担癌モデルマウスを用いたインビボ実験の結果、[^<125>I]o-BONは、癌細胞に発現したシグマレセプターに選択的に結合し、癌細胞におけるシグマレセプターの発現量を測定することができることを見出した。さらに、各種担癌モデルマウスにおいて[^<125>I]o-BONの癌への集積量は、シグマレセプターの発現量及び癌の増殖能の指標であるdubling time(癌細胞が2倍に増殖するのに要する時間で、短いほど増殖能が大きい。)と高い相関性を示した。 したがって、[^<125>I]o-BONは、悪性腫瘍診断用放射性薬剤として脳腫瘍を含む多くの癌で適用可能と考えられ、癌の形態学的診断のみならず、癌の悪性度診断も可能であると示唆された。
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