研究概要 |
シグマレセプターは、精神病、うつ病などの中枢性疾患、ジストニア、遅発性ジスキネジアなどの中枢性運動障害、カルシウムチャンネルなどと密接に関係していると考えられてきた。また、シグマレセプターは、脳内アセチルコリン作動性神経系の機能を調節するなど、他の神経系の伝達を調節しており、高次脳神経機能の調節と、学習記憶形成過程において重要な役割を果たしていることが明らかとなり、近年、学習記憶障害や痴呆症との関連から大いに注目されている。 本研究では、脳虚血により引き起こされる遅延性神経細胞死とシグマレセプターとの関連について検討した。これまでに開発したシグマレセプター機能診断用放射性薬剤である[^<125>I]o-BON{1-(2-[^<125>I]iodophenyl-propyl)-4-(3,4-dimethoxyphenylethyl)piperazine}および、ラットを用いて作製した脳虚血モデルを用いて、脳虚血時におけるシグマレセプター分布の変化を、遅延性神経細胞死が確認される海馬領域を中心に観察した。脳虚血モデルとして、虚血側と正常側を同一個体で比較可能な中大脳動脈閉塞モデル(MCAOモデル)を用いた。このモデルラットでインビトロオートラジオグラムを作製し、虚血時における[^<125>I]o-BONの集積量を画像評価した。 インビトロオートラジオグラム法により、海馬CA1領域における[^<125>I]o-BONの集積量は、虚血再灌流2時間後で有意な上昇が確認できた。この結果は、インビトロで海馬CA1領域における虚血再灌流後早期に[^<125>I]o-BON集積量が増加することを示しており、[^<125>I]o-BONが、遅延性神経細胞死に至る以前に再生可能部位を描出し、画像診断の可能性をもつことを示唆している。
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