研究概要 |
悪性腫瘍の適切な切除を可能とすることを目的にF-18-FDGの放出するポジトロンのみを検出可能な術中プローブの開発を行った。プローブはプラスチックシンチレータとBGOを積層し光電子増倍管(PMT)に接続した構造とした。腫瘍から放出されたポジトロンはプラスチックシンチレータに入射し発光し約20n秒で減衰する。プラスチックシンチレータでエネルギーを失ったポジトロンは2本の511keVのガンマ線を放出する。その一方はBGOに入射し、発光し約300n秒で減衰する。この発光波形の違いを用いることにより検出した事象がポジトロンによるものかノイズと,して除去すべき消滅ガンマ線によるものかを判別することを動作原理とする。開発したポジトロンプローブのサイズはBGOが直径10mmで高さが15mm、プラスチックシンチレータが直径5mmで厚さが2mmのものを光学結合し10mm直径の光電子増倍管(PMT)に接続した。検出器全体は厚さ4mmのタングステン容器に納めた。PMTからの出力は電子回路で事象ごとに真の事象か消滅ガンマ線によるノイズの事象かを判別する。ポジトロンプローブの性能として以下の結果が得られた。空間分解能はコリメータから2mmの距離において5mmFWHM、感度は3.8cps/kBq、消滅ガンマ線によるバックグランド計数は2mCiの20cm円柱状ファントムに対し5cps以下であった。計数率特性は5kcpsまでほぼ直線であった。これらの結果から開発したポジトロンプローブはF-18-FDGを用いた腫瘍の切除術に有効なシステムであることが明らかになった。
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