本年度は、ヒト単核球および多核球内を試料として、human period1(hPer1)およびhuman BMAL1a(hBmal1)の二つの時計遺伝子の定量法の開発をめざした。抗凝固処理した全血5mLをPolymorphoprep(AXIS-SHIELD)により単核球および多核球に分画し、改良した方法により糖質除去処理を施した。各分画から磁性ビーズ法により直接mRNAを抽出し、SuperScript IIによりfirst-strand cDNAを作成した。昨年度報告した手法に準じて、新規にhBmal1測定用のプライマー・ハイブリプローブセットを設計し、配列特異的オリゴヌクレオチドを用いたReal Time-PCR法の至適化作業を行った。種々のPCR条件下での増幅率について検討を行った結果、各遺伝子について安定的かつ再現性の高い増幅曲線が得られた。睡眠覚醒スケジュールを統一した健常成人6名を対象として、平均覚醒時刻の3〜4時間後に血液検体を採取し、上記の方法に従って、各細胞分画の時計遺伝子の発現定量を行った。その結果、被験者全例で、生物時計からの直接的な神経投射を受けないヒト単核球・多核球細胞においてもhPer1およびhBmal1が発現していることが示された。また、単核球内では両遺伝子の発現レベルはほぼ同等であったのに対して、多核球内ではhPer1に比較してhBmal1の発現が4〜5倍亢進していることが確認された。
|