本研究の目的は、新生仔期に腹側海馬を傷害した神経発達障害モデルラットを用いて行動薬理学的にその異常を検討し、精神分裂病の病態生理を解明することにある。そのためにこのラットに精神異常惹起物質であるコカインを反復投与して行動感作の程度を検討する。 Sprague-Dawley雄性の生後7日のラットを用いた。定位脳手術で、両側の腹側海馬にイボテン酸を1.5μgづつシリンジポンプにて注入した(Lesion群)。対照として同量のPBS緩衝液を注入した(Sham群)。生後21日に離乳し、両群それぞれ別のケージで2〜3匹づつに分けて飼育した。 生後35日にこれらのラットを行動測定用のケージに移し、新規環境での行動量を30分間測定し、その後両群とも生理食塩水を腹腔内に投与し、注射によるストレスを負荷した時の行動量を30分間測定した。その結果、新規環境、注射とも行動量に両群間で有意な差はなかった。この神経発達モデル動物において行動の異常は思春期前には顕在化せず、思春期以後に明らかになることが報告されている。生後35日はラットの思春期前であり、本実験でも同様のことが確認された。 現在本実験は進行中であり、生後49日に両群にコカイン(20mg/kg)を7日間連続投与し、投与期間中の行動量と常同行動を測定する。投与終了後1週間の離脱期間をおいてコカインを再投与して行動量と常同行動を測定し行動感作の程度を比較する予定である。
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