研究概要 |
小児期から成人期まで追跡されたDSM-IVの特定不能の広汎性発達障害(PDDNOS ; ICD-10では非定型自閉症,atypical autism)群12人(初診時年齢=8.0歳,SD=4.3;追跡時年齢=20.0,SD=0.1;男8,女4)と自閉性障害(autistic disorder, AD ; ICD-10では小児自閉症,childhood autism)群24人(初診時年齢=8.7,SD=4.9;追跡時年齢=20.2歳,SD=0.4;男21,女3)(2時点で年齢に有意差なし)において、全訂版田中ビネー知能検査IQ、小児自閉症評定尺度東京版(CARS-TV)総得点および高機能(IQ≧70)例の比率を時点間と群間で比較した。IQは、両群とも初診時より追跡時に有意に低下し、群間では初診時はPDDNOS群(M=59.3, SD=16.9)がAD群(M=48.1, SD=14.9)より有意に高かったが、追跡時にはPDDNOS群(M=51.8, SD=22.6)とAD群(M=41.4, SD=18.5)の間に有意差はなかった。一方、CARS-TV総得点は、両群とも初診時と追跡時に有意差がなく、群間では初診時にPDDNOS群(M=26.8, SD=2.9 ; n=9)はAD群(M=31.2, SD=3.8 ; n=22)より有意に低く、追跡時にもPDDNOS群(M=28.2, SD=3.9)はAD群(M=31.4, SD=9.2)より有意に低かった。高機能群の比率は、両群とも初診時と追跡時で有意差はなく、群間では初診時はPDDNOS群(33.4%)でAD群(3.8%)より有意に高く、追跡時にはPDDNOS群(16.7%)とAD群(3.8%)に有意差はなかった。これらのことは、より生物学的基盤が想定される自閉症状は時間経過と関連した教育・経験の影響を受けにくく、より軽度の障害であるPDDNOSでより軽度であり、それらがより関与するIQは時間経過によって差が減少したものと思われる。
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