研究課題/領域番号 |
13670987
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
精神神経科学
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
窪田 哲朗 東京医科歯科大学, 大学院・保健衛生学研究科, 助教授 (90205138)
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研究分担者 |
西川 徹 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (00198441)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 内在性D-セリン / NMDA型グルタミン酸受容体 / キノリン酸 / 内側前頭葉皮質 / 線条体 / 精神分裂病 / 抗D-セリン抗体 / 海馬初代培養組織標本 |
研究概要 |
D-セリンは、本研究グループの西川らによって1991年に新たに見出された内在性アミノ酸である。D-セリンは、高次脳機能に関与するNMDA型グルタミン酸受容体のコ・アゴニストとして作用し、精神分裂病患者の症状改善作用および精神分裂病様症状発現薬投与動物の異常行動抑制作用をもつことや、脳に選択的でNMDA受容体と酷似した分布を示すことから、精神機能の調節に関わる未知の情報処理系を構築している可能性がある。 本研究では、内在性D-セリンの局在とその機能的意義を調べる目的で、キノリン酸の局所注入により神経細胞体を選択的に破壊しラット前頭葉(両側性破壊)において、細胞外および組織中のD-セリンと他のアミノ酸、ドーパミン、セロトニン、等を測定した。キノリン酸注入8日後の前頭葉皮質では、D-セリン、GABA、グルタミン酸、およびグリシンの組織中濃度が著明に低下した。これに対して、L-セリンは有意な低下を示したものの、上記のアミノ酸より変化がはるかに小さかった。線条体では、グルタミン酸とグリシンの有意な低下が認められたが、D-セリンやGABAの濃度には変化がなかった。さらに、キノリン酸注入部位で、in vivoダイアリシス法を用いて細胞外液への放出を観察したところ、D-セリン放出が著明に低下することがわかった。一方、細胞レベルにおkるD-セリンの分布を解析するため、D-セリンをkeyhole limpet hemocyaninにグルタールアルデヒドで架橋したものを抗原として、D-セリン-グルタールアルデヒドを認識するD-セリン特異的抗体を作製した。本抗体を用いて、グルタールアルデヒドで固定した海馬初代培養標本で免疫組織化学的検討を行ったところ、D-セリン様免疫反応がニューロンおよびアストログリアに検出された。これらの結果から、1)前頭葉皮質においてはD-セリンが神経細胞に含まれているか、内在性D-セリンの組織および細胞外液中の濃度調節に神経細胞が関与している、2)線条体への投射線維にはD-セリンが存在しないこと、3)内在性D-セリンはニューロンとグリアの双方に含有されている、などの可能性が示唆された。
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