研究概要 |
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は本邦でもうつ病治療の第一選択となっているものの、症例によってはSSRI以外の抗うつ薬,三環系抗うつ薬(TCA)などを最初に選択すべきと思われる患者が少なからず存在することも事実である。これまで様々な視点から各種抗うつ薬の抗うつ効果を予測しようという試みがなされてきたが、実際の臨床に応用される程確立されたものはない。 そこで、我々は本邦初のSSRIであるfluvoxamine(FLV)について臨床研究をおこない、日本人うつ病患者に対するFLVの臨床効果を,うつ病の臨床的特徴、FLVの薬物動態学的特性、FLVの作用部位の特性などから予測できないか検討した。日本人のうつ病患者58名をfluvoxamine(FLV)で12週間治療し、血中濃度を主体とする薬物動態学的因子とセロトニン・トランスポーター遺伝子多型(5-HTTLPR)という薬力学的因子が、FLVの臨床効果予測に役立つか否かについて検討した。 我々の検討では、FLVの濃度にそれ以上増加させてもさらなる臨床効果が期待できない「十分濃度」が存在し、この血中濃度による効果予測は用量によるものよりも有用であることが明らかになった。更にこの「十分濃度」を達成するFLVの用量には大きな個体差がみられたが、CYP2D6遺伝子多型とCYP1A2を誘導するといわれる喫煙の有無から、これら個体差を予測できる可能性が示唆された。5-HTTLPRと抗うつ効果の間に有意な相関は認められなかったが、本研究では症例数が少ないという問題もあり、今後症例を追加して検討する必要があると考えられる。
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