ラット海馬スライスCAI野放線層に100Hz、1秒間の高頻度刺激を10秒間隔で反復して加えることにより、てんかんの発作期異常波のモデルであるキンドリンと類似の後発射の発展的誘発を錐体細胞層から場の電位で記録した。この後発射の発作期モデルとしての妥当性を検証するために、抗てんかん薬の効果を調べた。側頭葉てんかんに有効であるカルバマゼピンとフェニトインが治療有効濃度と一致する用量で後発射の発生を抑制したが、側頭葉てんかんに無効であるエトサクシミドは後発射の発生に影響しなかった。以上の所見より、われわれの海馬スライス後発射モデルが、側頭葉てんかんの発作期モデルとして有効であることが示唆された。加えて、細胞内電位記録をCAI野の興奮性錐体細胞から記録した。高頻度刺激の反復により後発射が発展的に誘発された海馬スライスにおいて、GABA介在抑制性シナプス後電位は保持された。さらに、場の電位で記録された後発射に一致して多数の活動電位が重畳する脱分極が誘発されたが、この脱分極にGABA介在性と推定される過分極が先行して誘発された。GABA拮抗薬であるビククリン投与により、GABA介在性の過分極は焼失し、場の電位で記録される後発射とそれに一致する脱文極も抑制された。以上より、発作期異常波がGABA機能の抑制(脱抑制)によって誘発されるのではなく、GABA機能の保持が発作発生に関与する可能性が示唆された。
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