研究概要 |
研究代表者らは、幻覚妄想体験に対する新しい精神療法(認知療法)を考案した。新しい精神療法を作成した理由は、従来の治療法にあった以下の重大な問題点・課題に対応することである。(1)病識がなく通院・服薬を拒否する患者の治療導入を円滑に進めるための方法の開発が不十分。(2)薬物療法抵抗性の幻覚妄想体験に対する治療法の開発が必要。(3)従来の治療法では再発予防が不十分であったため、新しい再発対策が必要。(4)幻覚妄想体験によって生じるスーキーマの変化への対応法が必要。 本年度は、「幻覚妄想の治療のための患者・家族用パンフレット」の内容を一部改訂し、理解を助けるイラストを加えた新版を作成した(「正体不明の声-治療のためのハンドブック」)。そして、すでに臨床の場での実地利用を開始している。 また本認知療法の「内容、適応、利用法、精神分裂病の治療全体の中での位置づけ」などを、学術専門誌において論じた(「精神医学」2001、「精神神経学雑誌」2001)。さらに、本認知療法を用いて病識の乏しい初発分裂病患者の治療を行った臨床経験を専門誌で報告し、本法の有用性を述べた(「臨床精神医学」2001)。 加えて、本法の内容の一部を英文にて紹介した。(Harada S and Okazaki Y:A New Cognitive Therapy for Auditory Hallucinations and Delusions:Development of a Guide for Psychotic Patients and Their Family Members.Kashima H,Fallon IRH(eds):Comprehensive Treatment of Schizophrenia,Springer-Verlag,Tokyo,pp367-373,2002) また、本法をもとにして作成した分裂病の1次・2次予防のための心理教育用パンフレットを、専門誌において紹介し論じた(「Schizophrenia Frontier」、2002)。
|