研究概要 |
1.発達期の扁桃核キンドリングにより獲得されたてんかん原性の成熟に伴う変化 生後14日,28日,40日および70日齢のラットを用い,扁桃核キンドリングを完成後8週間後に同側あるいは反対側扁桃核の再キンドリングを行った.その結果,初回キンドリングを28日齢以降に施行した場合,1次部位のてんかん原性は維持されていた.一方,2次部位のてんかん原性は,初回キンドリングが40日齢以降に施行された場合のみ維持され,1次部位と2次部位のてんかん原性の維持機構に違いを認めた. 実験1を踏まえ,幼若期に獲得されたけいれん準備性の長期維持機構について以下の実験を行った. 2.扁桃核キンドリングに及ぼす新生仔期グルタミン酸Naの影響 生後1日目から9日目まで隔日にMSG4mg/gを投与した群は対照群に比べ,生後14日齢のキンドリング完成に要する刺激回数は有意に少なかった.また,14日齢にキンドリング完成後70日齢に再キンドリングを施行した場合,新生仔期にMSGを投与した群は対照群に比べてキンドリング完成が有意に促進された. 3.扁桃核キンドリングに及ぼす胎生期メソトレキセートの影響 妊娠14日目にMTXを5mg/gを投与した群は対照群に比べ,生後14日齢のキンドリング完成に要する刺激回数は有意に少なかった.さらに,14日齢でキンドリング完成後,70日齢に再キンドリングを施行した場合,胎生期にMTXを投与した群は対照群に比べてキンドリング完成が有意に促進された. MSGは興奮性アミノ酸系の神経伝達物質で,新生仔期に投与された場合に,神経系の変化をきたし,また葉酸拮抗薬であるMTXを胎生期に投与した場合,同様に神経系に影響を及ぼすことが知られている.今回の研究結果から,胎生期から新生仔期に神経系の発達に影響を及ぼす薬物を暴露された場合,幼若期に獲得されたけいれん準備性は成熟後にも維持されることが示唆された.
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