研究概要 |
培養細胞C6を用いて、細胞死に関する以下の実験を行った。 (1)NaFを処置した後の細胞死について、WST-8を用いて測定したところ、NaF処置の濃度と時間に依存して、細胞死が生じた。 (2)NaFによる細胞死を、Ca2+-ATPase阻害剤であるthapshigarginが抑制した。 (3)Thapshigarginは細胞内カルシウムを上昇させることが知られているので、thapshigarignによる細胞内カルシウム上昇に対するNaFの影響を、細胞内カルシウム感受性色素fura-2を使用して検討したところ、NaFはthapshigarginによる細胞内カルシウム濃度上昇を抑制した。 (4)細胞死と関連の深い細胞内酵素caspase-3の活性と上記薬物の関係について検討した。NaFおよびthapshigarginを処置した後の細胞を破壊し、細胞質のcaspase-3活性をenzyme-linked immunosorbent assay法により測定したところ、NaFがcaspase-3活性を増加させ、thapshigarginがそれを抑制した。 (5)NaFによる細胞死に関係する細胞内情報伝達系を検索する目的で、種々の細胞内酵素の阻害薬をNaFと同時に処置した後の細胞死を検訂した。その結集、細胞内カルシウム・キレート剤であるBAPTA、細胞内カルモジュリン阻害薬であるW-7は、それ自身で細胞死を誘発した。その他に、H-89,sodium nitropruside, herbimycin A, genistein, FK506はNaFによる細胞死を抑制しなかった。 (6)向精神薬などの薬剤の効果についても検討したが、治療濃度付近の抗うつ薬であるclomipramine, citablpram, milnacipranや、lithium, nilvadipineはNaFによる細胞死を阻害しなかった。 (7)神経ステロイドであるデヒドロエピアンドロステロン、デヒドロエピアンドロステロン硫酸エステル、エストラジオールの細胞死に対する効果を観察したが、これらの神経ステロイドはNaFによる細胞死を抑制しなかった。
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