研究概要 |
神経系由来培養細胞Neuro2Aを使用して、細胞障害に関する以下の実験を行った。 1.Neuro2Aをシャーレに播種して10%FCS含有Dulbecco Modified Eagles Mediumで培養し、ほぼ一杯になった状態で各種試薬に暴露した。その後の細胞の生存率をWST-8を用いて測定した。 2.フッ化ナトリウム(NaF)を暴露した細胞では、その濃度と時間に依存して細胞障害が観察された。すなわち、NaF 1mMを24時間暴露した時の細胞生存は約50%、NaF 3mMを24時間暴露した時の細胞生存は約20%であった。NaF 3mMを4時間暴露した場合の細胞生存は約50%で、24時間では約20%であった。このように暴露時間は24時間まで時間に依存して細胞障害が亢進したので以下の実験ではNaFの暴露濃度を1および3mM、暴露時間を24時間とした。 3.NaFによる細胞障害の機序を探るために、細胞内Ca-ATPase阻害作用を持ち細胞内力ルシウム濃度を上昇させる作用も持つthapshigarginをNeuro2Aに暴露した。その結果、thapshigargin単独ではNeuro2Aの生存率を減少させたが、NaF 1mMによる細胞障害をthapshigargin 10,30microM同時暴露が有意に抑制した。この結果から、NaFによる細胞障害の機序として、少なくとも一部分は細胞内カルシウムの枯渇が関与していることが示唆された。 4.続いて神経ステロイドがNaFによる細胞障害に及ぼす影響について検討した。神経ステロイドの一つであるestradiolをNaFと同時に暴露したところ、estradiol 10,30microMで濃度依存的にNaF 3mMによる細胞障害を阻害した。しかし、その他の神経ステロイドのうち、dehydroepiandrosteroneやdehydroepiandrosterone sulfateはNaFによる細胞障害を抑制しなかった。
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