研究概要 |
1)疾病期間が10年以上を経過した慢性・遷延例についての検討 疾病期間10年以上の慢性・遷延化症例31名のサブタイプ別にみると(AN-R:7例、AN-BP:12例、BN-P:6例、BN-NP:1例、EDNOS:5例)であった。このうち、AN-R, AN-BP, BN-P群では持続的ないし間歇的な半飢餓状態を招来されていることが推察され、それらは80%を占めた。以上からこれら3群では持続的ないし間歇的な半飢餓状態が二次的に心理、生理へ影響を及ぼすと同時に神経内分泌が刺激されて異常食行動が促進され慢性化していくと考えられた。 2)摂食障害患者の養育体験について ED群はコントロール群に比して、父親、母親から「拒絶」され、「情緒的暖かみ」を有意に感じていなかった。また父親は「過保護」の(成績重視)と(過干渉)ともに有意に低く、父親は無関心、放任の態度(存在感が希薄)をとっていると感じていた。母親は「ひいき」において有意に高く、母親と患児間に密着関係のあることが示唆された。また、AN群とBN群の比較ではBN群の父親が有意に「拒絶的」で母親は「過保護」の「成績重視」「過干渉」ともに有意に高かった。 3)研究成果を踏まえた新しい治療プログラムについての提案 このように早期発見による早期治療は重要であるが、あくまでも子どもだけでなく、親を含む家族の問題として捉え、治療者は子どもの治療と同時に側面から親をサポートすることが大切である。子どもの自己中心的な行動はオペラント強化されない対応が求められる。また、過食・嘔吐を繰り返すようになると精神的・身体的バランスの乱れによる影響もあって、治療抵抗はさらに強くなる。出来るだけはやく入院によるチーム医療を考えたほうがよい。過食・嘔吐の繰り返しによる心身バランスの乱れによる作用が対応を一層困難にするからである。
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