P50およびP300の両事象関連電位を精神分裂病患者31名から同時に記録した。 1.P50について:一対音刺激法(刺激間隔250msec)を用い、第1および第2刺激による誘発電位を各々S1およびS2振幅とし、sensory gatingをS1振幅に対するS2振幅の比で表した。欧米における過去の報告同様、精神分裂病患者では振幅比が高値(>50%)で、sensory gatingが障害されているパターンを示した。現在、性と年齢をマッチさせた健常群からも同様の記録を行っているが、振幅比はより低値(0〜20%)の傾向を示している。 2.P300について:P59記録に引き続き、oddball paradigmを用いて同一患者からP3aおよびP3bを記録した(n=31)。両振幅共に精神分裂病患者では低値傾向を示し、何らかの認知機能障害を示唆するものと思われる。対象群からの記録がP50と同様に進行中である。 3.P50とP300の関係:P50は脳幹網様体賦活系のニューロン活動を反映する電位とされる。一方、P300はより高次め脳機能(海馬および側頭葉等)が発生源として推定されており、両者の関係を論じた報告は渉猟し得た限りではまだない。今回、P50のsensory gatingとP300振幅・潜時との間に何らかの相関が存在するという仮説を立てて種々の解析を試みている。 さらに、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を全患者で施行し、これら症候学的指標と電気生理学的パラメータとの関連も合わせて調査中である。
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