研究概要 |
【背景】P50聴性誘発電位(潜時40〜70msec)は網様体賦活系のニューロン活動を反映するとされ、sensory gatingの指標として近年臨床応用が盛んに行われている。【方法】統合失調症および正常群で一対音刺激法(刺激間隔0.25sec)を用いて記録を行った。第1(S1)および第2(S2)刺激による振幅を各々P50s1およびP50s2とし、sensory gatingを(P50s2/P50s1)×100(%)で表した。さらに統合失調症でPositive and Negative Symptoms Scale (PANSS)を、また正常群でSchizotypal Personality Questionnaire (SPQ)を用いた評価を行い、各々の評点とsensory gatingとの関連を調べた。【結果】1)P500 sensory gatingは正常群20.9±20.0(n=27)、統合失調症84.4±58.3(n=27)で、両群間の差は有意であった(P<0.001)。2)統合失調症群において、sensory gatingはPANSSのいずれの評点とも相関を示さなかった。3)正常群(n=34)において、sensory gatingは総SPQ評点(r=0.525、P=0.001)およびwithdrawn factor (r=0.486,P=0.004)と有意に相関した。4)SPQ低評点群(n=21)に比較して、高評点群(n=13)は有意に低いsensory gatingを示した(z=3.40,P=0.001)。【考察・結語】今回、欧米圏で報告されてきた統合失調症のSensory gating障害が追試された。加えて、正常群で示されたsensory gatingとschizotypal traitsとの相関は、統合失調症におけるsensory gatingと症候学(特に陰性症状)との間のなんらかの関連を示唆するものと思われた。
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