研究課題/領域番号 |
13671025
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松永 寿人 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (20254394)
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研究分担者 |
松井 徳造 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (90305623)
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キーワード | obsessive-compulsive disorder / subtype / cognitive therapy / SSRI / behavioral therapy |
研究概要 |
前年度報告した研究結果に加え、今年度は、標準化した薬物と行動療法の定型的併用療法(combined treatment ; CT)に対する一年間の治療予後を調査した。そしてYale-Brown Obsessive-Compulsive Scale (Y-BOCS)の重症度評価を用い、20%未満の改善率に留まった群を反応不良群、50%以上の改善を示した群を反応良好群として、両者の初診時の臨床特徴を比較した。その結果、不良群の初診時の特徴として、1)初診時の強迫症状の内容が多彩であること、2)全体的機能水準が低レベルであること、3)症状の不合理性に関する洞察が不良であること、4)clduster Aの人格障害が高率であること、などを認めた。この結果から、強迫症状の不合理性に関する洞察不良、すなわち症状の合理性、正当性に関する頑な信念が、OCDの治療抵抗性に関わる主要な要因として示唆された。この出現に、大うつ病などに伴う認知的歪みの関与が考えられる場合には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)とノルアドレナリン系に作用する抗うつ薬との併用が、そしてcluster Aなど精神病的箱神病理の関与が疑われる場合には、SSRIとドーパミン系を中心とした抗精神病薬の付加投与、又は洞察を促す認知療法などを、定型的CTへの付加的治療とした。この方法による継続的治療により、不良群に対し、有意な治療効果を認めたことから、標準的CTに抵抗的な患者への付加的治療を、以下の様にまとめた;1)薬物の再調整、例えば主要薬物の増量、同系統他剤への変更や、他の系統薬物、非定型抗精神病薬(例えばリスペリドン・オランザピン)や、ノルアドレナリン系に作用する抗うつ薬の併用(大うつ病の併存を認める場合)、2)認知行動療法;曝露反応妨害法の工夫、特に認知面の修正を重視した洞察や治療的動機づけの強化、3)家族療法など他の精神療法、4)行動療法の集中的練習を目的とした1ヶ月の短期入院、または3ヶ月の定型的入院。この様なOCD治療のアルゴリズムについて最近学会で発表し、一部は論文にも報告した。また総括的な論文を執筆し、英文投稿も試みる予定である。
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