研究概要 |
平成13年度にば強迫性障害(OCD)患者の多様性に関する多角的臨床研究について、主に3つの視点から検封した。最初は「洞察レベル」を基準とするもので、強迫症状の不合理性に関する洞察を客観的に評価し、「洞察良好群」、「不良群」間の比較を治療反応性など多角的に行い、洞察を基準とした場合の臨床的有用性を検討した。初診時の洞察レベルは改善する可能性はあるが、不良な状態を継統する患者はより精神病理学的問題が重度で治療抵抗的であり、DSM-IVの「洞察に乏しい場合」の亜型分類を一部支持するものであった。次に強迫症状を「生涯」の中で評価するlifetime symptom typologyを用いて、「汚染/洗浄」、「確認」、及び「両者を併有する群」に分け長期的に比較検討した。この結果は、OCDの中でも多様な症状を経験している患者は、subtypeを形成する可能性が窺えた 平成14年度には、標準化した薬物と行動療法の定型的併用療法(combined treatment ; CT)に対する一年間の治療予後を調査した。そしてYale-Brown Obsessive-Compulsive Scale (Y-BOCS)の重症度評価を用い、20%未満の改善率に留まった群を反応不良群、60%以上の改善を示した群を反応良好群として、「両者の初診時の臨床特徴を比較した。その結果、不良群の初診時の特徴として、1)初診時の強迫症状の内容が多彩であること、2)全体的機能水準が低レベルであること、3)症状の不合理性に関する洞察が不良であること、4)cluster Aの人格障害が高率であること、などを認めた。そしてOCDに対する標準的治療に抵抗的な患者への付加的治僚を、以下の様にまとめた;1)薬物の再調整、例えば主要薬物の増量、同系統他剤への変更や、他の系統薬物、非定型抗精神病薬(例えばリスペリドン、オランザピン)や、ノルアドレナリン系に作用する抗うつ薬の併用(大うつ病の併存を認める場合)、2)認知行動療法;曝露反応妨害法の工夫、認知面への治療を付加し、洞察や治療的動機づけの強化,3)家族療法など他の精神療法の併用,4)行動療法の集中的練習を目的とした1ヶ月の短期入院、または3ヶ月の定型的入院などである。
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