研究概要 |
セロトニン(5-HT)症候群は抗うつ薬の投与中に発現する最も重篤な副作用である。 Selective serotonin reuptake inhibitors(SSRIs)やmonoamine oxidase(MAO)阻害薬が原因となることが多く、これらの薬剤が広く使用されている欧米で注目されている。わが国でも、1999年にはじめて最初のSSRIが臨床に登場し、現在2種類のSSRIが使用されている。また、新しいMAO 阻害薬であるmoclobemideの治験が終了し、臨床に登場する予定である。以上のようなわが国のうつ病治療の状況においては、5-HT症候群が増加する可能性が考えられる。しかし、5-HT症候群の治療に関しては確立されていない。そこでわれわれは、5-HT症候群の動物モデルを用いて5-HT症候群に対する幾つかの薬剤の有効性を検討した。5-HT症候群の動物モデルは、clorgyline 2 mg/kgと5-hydroxy-L-tryptophan (5-HTP)100mg/kgをラットの腹腔内に同時投与することにより作成した。有効性の指標は、5-HT症候群による体温上昇を抑制するかどうかによった。 まず、risperidone, pipamperone, ketanserinなどの強力な5-HT2A受容体遮断薬は5-HT症候群に最も有効であることを見出し、Brain Research 890(2001)23-31.に発表した。この論文には、5-HT1A容体であるWAY 10035とpropranolol,5-HT受容体の非特異的な遮断薬であるcyproheptadine,抗精神病薬であるchlorpromazine,末梢性の筋弛緩薬であるdantroleneの有効性に関しても検討を加えた。 次に、ドパミン作動薬であるbromocriptineが有効か検討した(吉野達規、西嶋康一、その他日本神経精神薬理学雑誌21:262,2001)。 さらに、最近NMDA受容体遮断薬であるmemantineが5-HT症候群の動物モデルに対して有効であることを認め、近く発表の予定となっている(西嶋康一、その他.精神薬療基金研究年報34集(in press)2002)。
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