HPAと時計遺伝子-感情障害との関連

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13671029
• 研究機関: 埼玉医科大学
• 研究代表者: 池田 正明 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (80232198)
• 研究分担者: 吉村 和法 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (20158497)
• キーワード: 時計遺伝子 / 転写調節 / BMAL1 / CRY1 / CLOCK / プロモーター / PER2 / Inter-activationg Loop

研究概要

私は時計遺伝子を構成する分子の中心は転写因子であると想定し、時計遺伝子のクローニングを行ってきたが、新規bHLH-PAS型転写因子のクローニングに成功し、脳と骨格筋に強く発現することからBMAL1(Brain and Muscle Arnt like protein 1)と命名した。BMAL1は生物時計の中枢である視交叉上核に特異的に発現しており、しかもその発現は暗期にピークを有すサーカディアンリズムを示した。また行動リズム周期の延長を示す変異マウスより単離された転写因子CLOCKと相互作用があり、BMAL1-CLOCKがPer1プロモーターに結合して転写を活性化することも明らかになり、今では時計遺伝子の一つと考えられている。視交叉上核ではBmal1のmRNAは暗期にピークを持つリズム発現を示すが(Honma S. et al.,BBRC 1999)、同部位でのPer1、Per2などのいわゆる抑制系因子のmRNAは明期にピークを示すリズムがあり、Bmal1に対して正反対の位相を有している。また視交叉上核以外の器官においても、位相は異なるものの、Per1などの抑制系因子とBmal1発現のピーク位相は逆位相となっているが、発現は保存されている。私達はこの逆位相転写機構が時計発振や時計の出力に重要な役割を果たしていると想定し、その分子機構を明らかにするためマウスBmal1 BACクローン塩基配列の解析、5'RACE法による転写開始点の決定およびマウスBmal1プロモーター領域の同定を行なった。これらの解析から抑制系因子の転写抑制因子であるCRY1、PER2がマウスBmal11プロモーターに対しては促進因子として働いていることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Abe H, Honma S, Namihira M 他: "Clock gene expressions in the suprachiasmatic mucleus and other areas of the brain during thythm splitting in CS mice"Mol Brain Res. 87. 92-99 (2001)
• [文献書誌] Namihira M, Honma S, Abe H 他: "Circadian pattern, light responsiveness and localization of rPer1 and rPer2 gene expression in the rat retina"NeuroReport. 12. 0471-0475 (2001)
• [文献書誌] Yu W, Nomura M, Ikeda M: "Interactivating feedback loops within the mammalian Clock : BMAL1 is negatively autoregulated and upregulated by CRY1, CRY2, and PER2"Biochem Biophys Res Commun. 290. 933-941 (2002)
• [文献書誌] 池田正明: "PAS因子の構造と機能"神経研究の進歩. 45. 742-754 (2001)
• [文献書誌] 池田正明, 海老澤 尚: "概日リズム障害と時計遺伝子"分子精神医学. 1. 31-38 (2001)
• [文献書誌] Ikeda M, Honma S, Abe H 他: "Molecular cloning and characterization of the clock gene Bmal1, in Zeitgebers, entrainment and masking of the circadian system"Hokkaido University Press, Sapporo, Japan. 5 (2001)