研究概要 |
われわれは神経発達障害が原因であることが有力視されている精神分裂病や神経変性疾患であるアルツハイマー病の疾患感受性遺伝子について明らかにするために、各種の神経栄養因子やその受容体をコードする遺伝子に注目して変異の検索と疾患との関連研究を系統的に行ってきている。今年度は、脳由来神経栄養因子(BDNF)やニューロトロフィン3(NT-3)などのニューロトロフィンによって誘導され、胎生期から軸索成長やシナプス形成の際に強く発現しているVGFタンパクをコードする遺伝子の変異検索を終了し、さらにニューロトロフィン共通の低親和性受容体であるp75をコードする遺伝子について変異の検索を行っている。 vgf遺伝子については、精神分裂病20例、双極性障害20例、アルツハイマー病20例のゲノムDNAを用いてエクソンとプロモータ領域について11組のプライマーをデザインして直接シーケンス法によって変異を検索した。その結果、先行研究と異なる塩基配列を多数見出したが、いずれもわわわれのサンプル間で多型性を示さず、先行研究のシーケンスエラーであると考えられ、多型は見出されなかった。 次にp75遺伝子のエクソン領域について、6組のプライマーを設計し、精神分裂病20例、アルツハイマー病20例のゲノムDNAを対象に直接シーケンス法によって変異を検索している。その結果、ミスセンス変異1つ、サイレント変異1つを見出した。前者について精神分裂病とアルツハイマー病について関連研究を行ったが、有意な関連は見出されなかった。 今後は、p75の変異スクリーニングと関連研究とを終了し、HGF MET,LIFなどの神経栄養因子遺伝子について検討する予定である。
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