GABA_A受容体サブユニットのうちγ2及びα1について解析を行った。両サブユニットはベンゾジアゼピン薬物の作用部位構成に必須で特に重要なものである。統合失調症の候補遺伝子としても、γサブユニットにはshort form(γ2S)とlong form(γ2L)の2種類のsplicing variantが存在することが知られているが死後脳でγ2L発現が低下しており、ドーパミン5型受容体(DRD5)と直接結合し複合体を作ること等が指摘されている。またα1サブユニットは中枢神経でもっと多く発現しているサブユニットであり、統合失調症死後脳からmRNA発現量の上昇が報告されている。 [対象と方法]統合失調症患者288名と健常対象者288名。文書による同意を得た上で抹消血からDNA抽出を行った。DHPLC法にて多型の検索を行い、ダイレクトシークエンスで配列を決定した。次いで、PCR-RFLP法、又はHPLCを用いたprimer extension法によって遺伝子型を決定し、ハプロタイプによる関連解析を行った。統計学的検定には、カイ2乗検定、あるいはMonte Carlo法を用いた。 [結果と考察]γ2遺伝子に一塩基多型を6種類確認した。遺伝子頻度が1%以上の3種類の一塩基多型について統合失調症と健常対照群との間の関連を検討したが、有意差は認められなかった。この3種類の一塩基多型中2種類は同義置換であり、残る1種類はイントロン中にあった。α1遺伝子では8個の一塩基多型と1つのIns/del多型を同定した。統合失調症とのハプロタイプ解析ではやはり関連が認められなかった。今回の結果から統合失調症とγ2、α1遺伝子との関連はないものと考えられる。またアミノ酸置換を伴う変異がいずれも見いだされなかったため、眼球運動を含めたベンゾジアゼピン反応性との関連についても解析できなかった。GABA受容体遺伝子については重篤な痙攣性疾患の原因変異がいくつか報告されているが、今回の結果では頻度の高い変異は統合失調症をはじめとした一般疾患の原因変異としては認められなかった。
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