1、健常高齢者と対象患者のスクリーニングおよびデータの収集: 患者群、健常高齢者群ともに共通する選出項目としては、i)65歳以上である ii)精神神経疾患の既往がない iii)脳機能に影響を及ぼすと考えられる薬剤を服用していない iv)血液生化学検査で異常のないことである。健常高齢者群に関しては、i)脳波およびMRI検査(木下)において異常を認めない ii)高血圧や糖尿病など潜在的に脳機能に支障を及ぼす疾患のない(延原)ことを設定基準項目とした。患者群に関しては、関西医科大学精神神経科を受診した者のなかから選定し、ICD-10による診断基準に照合した。初期痴呆患者が対象となるため、重症度は、Clinical Dementia Scale (CDR)が2点以下であり、かつMini Mental State Examination (MMSE)15点以上であることを基準とした(木下)。これらの選出基準を満たした健常高齢者7名、晩発性初期アルツハイマー病痴呆患者13名の[I-123]IMP SPECT検査を実施し、acetazolamide負荷状態での脳循環予備能も同時に測定した。 2、塩酸donepezil投与後の縦断的観察: 初期アルツハイマー病患者群の対象患者の中で、塩酸donepezilを治療目的で投与した後、縦断的観察が可能と考えられる者に関しては、投与後も、臨床評価(延原、木下)とSPECT検査が実施されていた(延原)。現時点では、7名の初期アルツハイマー病患者において、塩酸donepezil投与3ヶ月後までの縦断的観察がなされている。結果、塩酸donepezil反応群は5例、非反応群は2例であった。反応群では投与3ヶ月後には全脳の脳血流量が増加しており、大脳基底核での増加が著しかった。一方の非反応群では全脳の脳血流量が低下していた。
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