軽度から中等度のアルツハイマー型痴呆患者7例が対象として選出された。年齢は70歳から80歳(平均74歳)、女性5例、男性2例であった。 上記対象に、ドネペジル(5mg/日)を投与して、ADAS-Jcogを用いて、ドネペジル投与前、投与1ヶ月後、投与3ヶ月後の計3回、臨床症状の重症度を評価した。 SPECT脳血流シンチグラフィには^<123>I-IMP 111MBqを用いた。撮影時間は、静注15分後から30分間と設定した。3検出器型カメラ、GCA-9300A・DI(Toshiba製)、高分解能ターボファンコリメータ、LESHR-Fanbeamを使用し、画像は64×64マトリックスで、OMラインに平行に3.4mm(1ピクセル)厚でスライス作成した。Autoradiography法を用いてデータを定量化した。画像各スライス上に、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、被殻、視床、海馬の部位に関心領域を設定し、関心領域ごとの平均値を算出し局所脳血流量を求めた。さらに、局所脳血流量の相加平均を全脳血流量とした。 ドネペジル投与後、ADAS-Jcogのスコアが減少した(臨床症状の改善)患者をレスポンダー群、逆に増加した(臨床症状の悪化)患者をノンレスポンダー群とみなした。 レスポンダー群に該当した5例では、投与3ヶ月後で、3.9点から7.7点、(平均5.5点)のADAS-Jcogのスコア減少がみられた。脳血流量に関しては、5例すべてにおいて、投与1ヶ月後から3ヶ月後の間に10%以上の全脳血流量の上昇を認めた。うち4例は、1ヵ月後においてすでに全脳血流量の増加傾向を示した。一方のノンレスポンダー群2例中の1例は1ヵ月後に20%の、残りの1例も3ヵ月後には11%の全脳血流量の低下をみた。レスポンダー5例の平均血流量推移を関心領域ごとにみると、1ヶ月目では大脳皮質を中心として増加し、3ヶ月目では基底核の増加が著しい傾向を認めた。このことから、アルツハイマー型痴呆患者におけるドネペジルの投与後1、3ヵ月後などの比較的短期間後のSPECT検査は、客観的な臨床効果判定法になり得る可能性が示唆された。
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