研究概要 |
精神分裂病の薬物療法において、陽性症状のみならず認知障害・陰性症状にも効果をもつとされている非定型抗精神病薬のノルアドレナリン(NA)作動性神経におけるNAトランスポーター(NAT)活性に及ぼす影響について検討した。本年度は、基礎研究として中枢NA神経系のNATと類似し、かつヒトのNATとの相同性が約94%と高いウシ副腎髄質細胞のNAT活性に対するclozapine, risperidone, zotepine,そしてolanzapineの4種の非定型抗精神病薬の影響について比較検討した。その結果、(1)培養副腎髄質細胞への^3H-NA取り込みに対してclozapine, risperidone, zotepine,そしてolanzapineはすべて濃度依存的に抑制した。そのIC_<50>値は各々、110ng/ml、220ng/ml、10ng/mlそして14ng/mlであった。^3H-NA取り込みにおけるEadie-Hofstee分析を行ったところ、clozapineはKm値を増加させ、Vmax値を減少させるいわゆる混合型阻害を示し、zotepineとolanzapineはVmax値は減少させるがKm値には変化を起こさない非拮抗阻害であった。(2)次にこれら薬物による、副腎髄質細胞膜のNATへの^3H-desipreamine結合に対する影響を調べた。その結果、clozapine, risperidone, zotepine,そしてolanzapineはともに^3H-desipreamine結合を抑制し、各々のIC_<50>値は、48、248、50そして120ng/mlであった。さらにScatchard分析を行ったところ、clozapineは混合型阻害を示したが、zotepineとolanzapineは非拮抗型阻害であった。 以上の結果から、今回使用した非定型抗精神病薬の4種類全ては、臨床治療濃度においてNAT活性を抑制した。この事は、これら薬物の臨床作用機序の1つとしてNAT活性の抑制が示唆されるが、薬物によりその阻害機序に若干の差が見られる事から、今後臨床効果との関係においてもう少し注意深く検討する必要がある。
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