研究概要 |
中枢神経系のノルアドレナリントランスポーター(NAT)と類似し、ヒトNATとの相同性が約95%以上と高い、ウシ副腎髄質細胞を用いて、非定型抗精神病薬(clozapine, risperidone, olanzapine, zotepine)のノルアドレナリン(NA)作動性神経におけるNAT活性に及ぼす影響について検討した。その結果clozapine, resperidone, olanzapine, zotepineはすべて臨床治療濃度においてNAT活性を抑制した。次にclozapine長期投与のNAT活性に対する影響を検討した。これらの結果よりclozapineの長期投与を行うと、まずNATのdown-regulationが生じ、引き続いて新たな蛋白合成を伴ったup-reguationが生じることが示された。更に我々は、臨床研究としてrisperidoneのカテコールアミン神経系への影響を検討した。その結果、(1)臨床症状(特に陰性症状)と血漿 3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(pMHPG)の変化(増加)との間に相関が認められた。pMHPGの変化と血中9-hydroxyrisperidone濃度との間に相関が認められた。risperidoneへの反応良好群では非良好群に比べて投与前の血漿homovanillic acid(pHVA)濃度が高値であった。(4)risperidone投与によるpHVA濃度の変化(減少)と陽性症状(特に幻覚・妄想、興奮の項目)の改善には相関が認められた。以上の基礎研究と臨床研究の結果から、以下の可能性が推定された。(1)非定型抗精神病薬の陰性症状あるいは認知機能の改善作用はこれらの薬物がNAT活性を抑制することにより、前頭皮質でのNAやドーパミンを増加させることに関連する。(2)非定型抗精神病薬の急性期の陽性症状に対する効果はドーパミン神経系の抑制作用と関連する。
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