研究概要 |
ヒトErythropoietin (Epo)遺伝子のプロモーター領域に存在するGATA配列にGATAが結合してEpo遺伝子発現を負に制御している。また、エンハンサー領域にHIF-1が結合してEpo遺伝子発現を促進している。この事実のもとに以下の研究結果を得た。 1)腎不全で著増するN^G-monomethyl-L-arginine (L-NMMA)に着目し、Hep3B細胞の実験系を用いて解析した。この結果、NOS拮抗阻害薬であるL-NMMAによりNO・cGMP産生は阻害され、さらにGATA結合活性・mRNA発現レベルが亢進することによりEpo遺伝子発現が抑制されて腎性貧血が発症することを認めた(Blood 96:1716-1722,2000)。この系にL-arginineを前処理することで腎性貧血が改善されることを認めた(Kidney Int 61:396-404,2002)。 2)H_2O_2はEpo遺伝子発現を抑制するが、HIF-1α鎖の不安定化させると共にGATA結合活性を亢進させることの両機序によることを認めた(J Cell Physiol 186:260-267,2001)。 3)カドミウムによるEpo産生抑制の機序は、HIF-1結合活性の低下によるためであり、GATAの関与は認めなかった(Arch Toxicol 77:267-273,2003)。 4)マウスEpo遺伝子のプロモーターは解明されていなかったが、ヒトEpo同様にプロモーター領域のGATA配列にGATAが結合してマウスEpo遺伝子発現を抑制していることを認めた(Int J Hematol 74:376-381,2002)。 5)睡眠時無呼吸症候群の重症例を用い、一過性の低酸素刺激による生体のEPO・VEGF反応を解析した結果、重症化するにつれHbが増加するとともにVEGFは約5倍増加したが、Epoは1.6倍と低く一過性の低酸素刺激による反応様式の相違を認めた(Blood 98:1255-1257,2001,Blood 99 393-394,2002,Respiration 71:24-29,2004)。 6)慢性貧血モデルマウスにGATA特異的阻害薬であるK-7174を静脈注射することにより慢性貧血が改善されることを認めた(FASEB J 17:1742-1744,2003)。 Epo遺伝子の発現に関わるkidney inducible element (KIE)を解明する目的で、BACを用いたトランスジェニックマウスでの解析により、Epo発現細胞は腎臓の近位尿細管周囲間質細胞であり、KIEは-22Kbpから-8Kbp上流域に存在することを確認した(In preparation)。
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