研究概要 |
1.rasとmyc遺伝子導入細胞におけるK選択による抗がん剤耐性機構:clonogenic assayでも,SRB assayと同様にK選択後の多剤耐性獲得が認められた.FACS解析では,DXRの細胞内濃度がcyclosporin A (CsA)によってK選択細胞でより低下することから,RT-PCRで認められたMDR1遺伝子の高発現が機能面からも示された.しかし,CsAによる耐性解除の程度は,clonogenic assayでK選択後とr選択後で有意な差が見られなかったため,高発現している他のABC transoporterの関与も考えられた.また,cytosine arabinosideに対してはP-糖蛋白以外の耐性機構が存在し,K選択後の多剤耐性には複数の機序が関与していると考えられる. 2.ヒト造血器腫瘍によるrとK選択モデルの作製:electroporationによる遺伝子導入効率が低いことやEBV感染リンパ芽球細胞を樹立するためのEBVタイターが低いことから,モデルの作製が困難であった.そこで,EBVのEBNA1によってepisomeに維持されるベクターを入手し再実験を行っている.また,ウイルスタイターの改善を試みている. 3.rとK選択において標的となるがん遺伝子もしくはがん抑制遺伝子の探索:p53変異体を導入後,rもしくはK選択を1ヶ月間ほど行うことで,導入細胞が培養中優位となることから,rとK選択による標的遺伝子の発現クローニングが十分可能だと考えられた.そこで,K選択後のMR8細胞より作製したcDNAライブラリーをレトロウイルスベクターに組み込んだ.現在MR8親株細胞にレトロウイルスを感染させ,rおよびK選択を行ってクローニングを進めている.いくつかの候補遺伝子が単離され,標的遺伝子かどうかの検証を行っている.
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