1.rasとmyc遺伝子導入細胞におけるK選択による抗がん剤耐性機構:rasとmyc遺伝子導入REF細胞MR5とMR8を用いて、rとK選択が抗がん剤感受性に及ぼす影響をSRB assayやclonogenic assayで検討し、doxorubicin (DXR)、vincristine、cytosine arabinoside (Ara-C)などに対してK選択が多剤耐性を誘導することを認めた。耐性に関連する遺伝子の中で、ABC transporters (MDR1、MRP1、BCRP)が高発現し、DXRの細胞内濃度がcyclosporin A (CsA)によって低下することから、K選択後の多剤耐性にP-糖蛋白/MDR1遺伝子の関与が示唆された。しかし、CsAによる耐性解除の程度は、clonogenic assayで有意な差が見られず、高発現している他のABC transporterの関与も考えられた。また、Ara-Cに対しては、P-糖蛋白以外の耐性機構が存在し、K選択後の多剤耐性には複数の機序の関与が考えられる。 2.ヒト造血器腫瘍によるrとK選択モデルの作製:EBV感染リンパ芽球様細胞樹立後のクローン選択は免疫グロブリン遺伝子CDRIII領域のPCRによって追跡可能であったが、種々の理由で、モデルの作製は困難であった。そこで、技術的な改良を加えて、c-myc導入Burkitt様細胞によるrとK選択モデルの確立を目指している。 3.rとK選択において標的となるがん遺伝子もしくはがん抑制遺伝子の探索:p53変異体を導入後、rもしくはK選択を1ヶ月間ほど行うことで、導入細胞が培養中優位となることから、rとK選択による標的遺伝子の発現クローニングの実現可能性が示された。そこで、K選択後のMR8細胞cDNAライブラリーを組み込んだレトロウイルスをMR8親株細胞に感染させ、rおよびK選択を行って標的遺伝子のクローニングを進めている。
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