研究概要 |
TEL/SYK融合遺伝子において、その下流にあるチロシンキナーゼのシグナルについて検討した。IL3依存性細胞株BAF3に、レトロウイルスベクターにてTEL/SYK遺伝子(BAF/TS)及びTEL/SYKΔPNT遺伝子(BAF/TSΔPNT)を導入した細胞を用いて、幾つかの細胞内チロシンキナーゼについて検討したところ、BAF/TSのみにSTAT5,PI3K,AKT,VAV,PLCγ2の恒常的活性化が認められた。TEL/SYK導入細胞ではSTAT系のみでなくPI3K系にも恒常的活性化が生じていることが確認できた。TELの分子会合領域であるPNT領域を除いたものではこれらの活性化は認められず、TEL/SYKタンパク同士の分子会合が自己活性化に必要であると考えられた。また、これらの活性化は、SYKチロシンキナーゼの阻害剤であるpicetanolにより抑制されBAF/TS依存性であることを確認した。 BAF/TSではIL-3非依存性の細胞増殖が認められるが、それがどのシグナル系に依存するか調べるため、JAK系のインヒビターであるJABをBAF/TSに遺伝子導入したが細胞増殖の抑制は見られず、STAT5の活性化はJAK系を介さない可能性が考えられた。STAT5のアンチセンスあるいはdominat negative STAT5を用いた抑制実験も行っているが、現在のところうまく抑制が得られていない。 一方、PI3Kの抑制薬Wortomannin.LY294002を加えた実験も行っており細胞増殖の抑制が認められている。これまでのところ、どちらのシグナル系が細胞増殖に強く関与しているかの断定は出来ないが、これらのシグナル異常が白血病の発症に関与してることが明らかにされた。 免疫蛍光染色で、TEL-SYK融合遺伝子は細胞質に存在することが確認されている。
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