研究概要 |
1.Kitシグナル伝達に関与する細胞内ドメインチロシン残基の検討:野生型c-Kit細胞質内各Tyr残基のPhe置換にて細胞機能に及ぼす影響を検討した。増殖・生存は影響を受けなかったがTyr567,569,719置換は細胞遊走を阻害した。下流シグナルの解析の結果、Tyr567はsrc family kinase、p38MAP kinaseの活性化からCa2+influxを生じ、その下流でErk1/2の活性化を生じていた。一方Tyr719はP13-Kinaseの活性化を介してCa2+influxを生じていた。これらの2つのシグナルは協調的に働き細胞遊走をもたらすことを明らかにした。一方、c-Kitキナーゼ領域変異型では野生型と異なりTyr719のPhe置換で、キナーゼ活性を消失し増殖活性が阻害された。Tyr719が恒常的活性化に必須であると共に下流シグナルのPI3-Kinaseがの腫瘍性増殖に重要である事が見い出された。 2.活性化変異c-Kitレセプター特異的阻害療法の開発:STI571,AG1296などのチロシンキナーゼ阻害剤が野生型に比較して膜直下型変異c-Kit活性を強く抑制した。一方キナーゼ領域型には単独、併用にても全く無効で、変異の部位によって阻害剤の感受性が異なることを見い出した。 3.活性化変異Flt3特異的標的遺伝子の解析:Flt3の活性化変異Flt3-ITDを用いたmicrochip解析にてSTAT3/5の標的遺伝子である、pim-2,CIS,SOCS3の発現が特異的に認められSTAT3/5がFlt3-ITDの腫瘍原性シグナルであることが示唆された。一方Flt3-ITD特異的に抑制される遺伝子としては、C/EBPalpha, PU.1などの骨髄分化に必須の転写因子がありFlt3-ITDのAMLにおける分化の阻害への関与が示された。
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