研究概要 |
(1)Adiponectin : Bリンパ球産生抑制という新しいAdiponectinの作用を見出した。その機序として、Adiponectinがストローマ細胞にCOX-2,PGE2を誘導し間接的にBリンパ球産生を抑制することを明らかにした。また、脂肪細胞により産生されるAdiponectinが脂肪細胞の分化を抑制するというautocrineな産生制御機構も存在することも明らかにした。Adiponectin欠損マウスのリンパ・造血組織の異常は認められなかったが、感染をはじめ何らかの負荷がかかった時にAdiponectinが意味を持つと考えている。 (2)Limitin:リコンビナントLimitin蛋白や抗Limitin抗体を作製し、Limitinの生理作用や蛋白発現を解析した。Limitinは細胞障害性Tリンパ球キラー活性を増強させるとともに抗原提示細胞上のMHC class I抗原発現を増強させた。また、Limitinはp210bcr/ablを強制発現させた血液細胞株の増殖を抑制した。マウス脳心筋炎ウイルス・マウス肝炎ウイルス・単純ヘルペスウイルス感染に対してLimitinはIFN-αとほぼ同等の抑制効果(20-30pg/EU)を示した。一方、Bリンパ球系や巨核球系コロニー形成を抑制するためにはIFN-αと比較して高濃度のLimitinが必要であり、IFN-αで認められた骨髄球系・赤芽球系細胞増殖抑制はLimitinでは認められなかった。以上、LimitinはIFN-αやIFN-βと同様に免疫調節作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用を示すが、LimitinはIFN-αやIFN-βと比較して骨髄抑制作用が少ないことが明らかとなった。シグナル伝達分子Tyk2を欠損させると、LimitinとIFN-αのコロニー形成抑制作用(CFU-IL7,CFU-Meg)が消失した。LimitinやIFN-αでBリンパ球系細胞を刺激するとDaxx蛋白(増殖抑制に関与)の誘導や細胞内分布変化が認められるが、Tyk2欠損細胞ではDaxx蛋白の変化が消失していた。以上、IFNによる骨髄抑制にはTyk2を介するシグナルが重要であることが明らかとなった。免疫組織染色にてLimitin蛋白の発現を解析すると、脾臓・胸腺に存在する成熟Tリンパ球や肺・唾液腺の腺細胞が陽性であった。また、胸腺におけるLimitin遺伝子発現は健常時から認められ、ウイルス感染による遺伝子発現増強は認められなかったことより、Limitinはウイルスの侵入に備えることや免疫状態を調節し腫瘍細胞など危険な細胞を排除することに対して健常時から生体内で関与していると考えられた。
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