研究概要 |
MAP kinase kinase kinasであるMEKK1,2,3,4は様々なストレス刺激により活性化され、下流のシグナル伝達分子のMAP kinase kinaseを活性化する。これらのMEKK familyの中で、最初にクローニングされたMEKK1は、細胞内で種々の蛋白と結合し、細胞の増殖、分化、細胞死、あるいは細胞運動の調節に関わっていることが報告されてきた。研究分担者の湯尻らは、このMEKK1をジーンターゲティング法により欠失したマウスや細胞を用いることによって、MEKK1の生理的な役割を明らかにしてきた(Yujiri T. et al. Science1998,JBC 1999,PNAS 2000)。MEKK1と同様にMEKK2,3も既にジーンターゲティングされており、興味深い報告がなされている(Garrington T. et al. EMBO J 2000、Yang J. et al. Nature Genetics 2000,Nature Immunology2001)。MEKK familyと細胞内で結合し、関係する蛋白の同定は、MEKKsの機能解明に重要である。実際、湯尻が以前所属していたJohnson研究室においては、MEKK2のN端をbaitとしたyeast two hybrid法により、MEKK2はProtein kinase C related kinase 2 (PRK2)と結合することやT細胞アダプター蛋白のLad/RIBPと結合することを同定し、MEK5/ERK5カスケードを調節することを報告した(Sun W. et al. JBC2000,2001)。MEKK1はC末端に約320アミノ酸残基のkinase領域を有し、約1,100アミノ酸残基の調節領域を有している。我々は、MEKK1のN端144-443アミノ酸残基の領域にfocal adhesion kinase (FAK)との結合部位が存在することを同定した。このMEKK1とFAKの結合はepidermal growth factor (EGF)刺激により増強され、生理的に意味のあるものと考えられた。このFAKとMEKK1の結合は、細胞膜近傍のfocal adhesionにおいて形成されることが予想され、細胞接着や増殖因子のシグナル伝達のクロストーク、またはCell migrationにおける機能といった点からも興味深い所見と考えられ、さらに検討中である。
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