研究課題/領域番号 |
13671069
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
朝長 万左男 長崎大学, 医学部, 教授 (40100854)
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研究分担者 |
陣内 逸郎 長崎大学, 医学部, 助教授 (70162823)
塚崎 邦弘 長崎大学, 医学部附属病院, 講師 (40274659)
林原 歳久 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (40325634)
長井 一浩 長崎大学, 医学部附属病院, 講師 (30304942)
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キーワード | adult T-cell leukemia / vascular endotherial growth factor / autocrine / leukemic progenitor cell / adhesion molecule / signal transuduction |
研究概要 |
(1)ATL細胞に対するVEGFの増殖刺激効果 ATL細胞株およびATL臨床検体を対象としたVEGFのもつ生物学的意義を検討した結果、ATL細胞においてVEGF遺伝子発現およびVEGF蛋白の産生・分泌をみとめた。またATL細胞表面にVEGF受容体のうちのひとつであるfms-like tyrosine kinase-1 (Flt-1)の発現を確認した。臨床検体においてVEGF遺伝子発現およびFlt-1遺伝子発現は、各々100%(11/11例)および73%(8/11例)でみとめられた。さらにVEGFはFlt-1陽性ATL細胞に結合する事をflow cytometry法で確認した。しかし、VEGF刺激はATL細胞の、増殖よりはむしろchemotactic activityを増強したことから、VEGFオートクライン系は臨床的にATL細胞の組織浸潤病変形成に重要な役割を果たす事が示唆された。さらに、ATL患者血漿中にコントロール群に比して優位に高濃度のmatrix metalloproteinase-9(MMP9)が存在することを明らかにした。これはATL細胞においてその遺伝子発現が亢進していることから、ATL細胞から分泌されているものであると考えられた。また、ATL細胞におけるMMP9発現亢進はTax蛋白によってtransactivateされること、これがNFkBやSP-1の作用を介していることを明らかにした。以上の所見より、ATL細胞の組織浸潤性にVEGFとMMP9が協調的に作用していることが示唆された。我々は現在、よりin vivo増殖系をmimicしていると考えられるMS-5細胞のfeeder layerとの共培養実験系におけるVEGF/VEGF受容体シグナル伝達系の意義を検討中である。すなわち本共培養系で増殖するATLの腫瘍性前駆細胞に対してVEGFオートクライン系が上記と同様の作用を持つか否かを、cobblestone area(CA)形成能、PCNA免疫染色、各種阻害実験、VEGF/VEGF受容体シグナル伝達系下流の蛋白群の活性化状態の解析等によって検討中である。 (2)接着依存性増殖ATL細胞におけるVEGF産生能と接着分子を介したシグナル伝達系との関連 MS-5共培養系で形成されたATL細胞のCAを対象として、インテグリンを介したVEGF遺伝子のregulationに関与するとされているFAK、PI3 kinase、Raf、MEKといった蛋白群の局在や活性化状態を免疫染色法やRNA in situ hybridization法で解析中である。さらに、VEGFに対する阻害抗体やVEGF受容体阻害剤、および接着分子そのものを培養系に添加することで、ATL細胞におけるVEGF/VEGF受容体シグナル伝達系の活性化状態の変化を(1)と同様の細胞生物学的・生化学的手法を用いて解析中である.
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