研究概要 |
マウスの骨髄からDexter培養法を用いて得た初代培養ストローマ細胞に、ヒトテロメラーゼ遣伝子(hTERT)とその両端にloxPを組み込んだレトロウイルスベクターのproducer cell lineを用いてhTERT遺伝子を導入した。hTERT遺伝子導入ストローマ細胞を繰り返し継代培養して増幅し、real time PCR法を用いてサイトカイン(SCF, TPO, Flt-3L, G-CSF)mRNAを定量したところ、in vitro増幅させたストローマ細胞は、初代培養ストローマ細胞および増幅前の遺伝子導入ストローマ細胞と比較して、そのサイトカイン産生能に差がない事が明らかになった。続いてCreリコンビナーゼ組み換えアデノウイルスベクターを用いて、増幅した不死化ストローマ細胞からhTERT遺伝子を切り出すことに成功した。BALB/cマウスにサイクロフォスファミドを大量(100mg/kg)に投与した2日後に、同系マウスから1x10^5個の骨髄単核細胞を移植して超大量化学療法の動物モデルを作製した。この動物モデルに、体外で増幅した後hTERT遣伝子を切り出したストローマ細胞の移植を併用して、造血回復速度を骨髄移植単独と比較検討したところ、増幅ストローマ細胞移植を併用したマウスの方が、有意に血球回復速度が速い事が明らかになった。 骨髄ストローマ細胞に不死化遺伝子を導入する事により、in vitroで効率的に増幅する試みは、今まで全く行われていなかった。今回の我々の検討により、in vitroで増幅したストローマ細胞を骨髄移植や末梢血幹細胞移植に併用する事で、重篤な骨髄障害(血球回復遅延)の回避が可能となり、超大量化学療法の治療成績は飛躍的に向上する可能性が示唆された。
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