研究概要 |
1)染色体転座を誘導する機構としてdouble strand break repair gene関連遺伝子の変異に注目し、骨髄腫とリンパ腫細胞株を用いてスクリーニングした。まずKu80遺伝子の変異および発現解析を行った。Ku80発現を16株のMM細胞株を用いたウェスタンブロット法とノザン法を用いて検討した。蛋白レベルでは発現消失や異常蛋白発現は認められなかったが、骨髄腫細胞株の1株(U266)において片アレルでのミスセンス変異を見い出した。同様にKu70,XRCC4,DNA-PKc, DNA ligase IVにおいても数株に片アレルでの遺伝子変異を見い出した。しかし遺伝子多型である可能性が否定できないため現在100例以上の健常者コントロールDNAを用いて遺伝子配列の決定を行っている。またそれぞれの変異蛋白がdominant-negativeに作用するか否かについても検討を進めている。2)多発性骨髄腫関連癌遺伝子産物である転写因子MUM1の標的遺伝子の探索を行うためにCMV-MUM1-Neo発現ベクターおよびmock vectorを導入したマウスIL-3依存性のpre-B細胞株であるBAF3細胞株を樹立した。MUM1発現クローンでは明らかな増殖速度の亢進が観察されたため、その原因遺伝子を明らかにするためにクロンテック社製のマウスcDNA 1.0,3.8 arrayを用いて発現差のある遺伝子の探索を行った。その結果、明らかにMUM1によって転写が促進あるいは抑制される遺伝子の幾つかを同定した。現在その一つであるケモカインの一種であるMIG遺伝子に注目し、MIG遺伝子プロモーターの各種配列を用いたluciferase活性の測定、EMSA解析を行い、ETS/ISREモチーフにMUM1が結合して転写活性を亢進させることをほぼ同定した。さらにMIGの発現がB細胞に高発現しているその受容体であるCXCR3を介して増殖活性を高めるのか否かについて解析を進めている。3)t(2;11)(p11;q23)転座を有するNCU-MM-1骨髄腫細胞株を用いて11q23座の二重色FISH法による転座切断点の同定を行い、切断点近傍に位置する遺伝子としてBOB.1/Pou2A1遺伝子を明らかにした。本細胞株で強い発現が認められたが、骨髄腫7細胞株の解析においても4株において発現を認めた。現在、骨髄腫検体における同様の転座症例の有無を検索中である。
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