研究概要 |
1)MUM1/IRF4の転写標的遺伝子の同定のためにマウスのB細胞株であるBaf3とヒトのバーキットリンパ腫由来細胞株であるP3HR-1細胞に同遺伝子を過剰発現させた。その結果、ケモカインの一種であるMIGがその下流遺伝子として発現誘導されることを見いだした。レポーター・アッセイとChipアッセイを用いた系ではMIGプロモーターに存在するEts/ISRE類似配列にMUM1とPU.1が結合し加えてNF-κBと協調してMIGの転写を活性化することが判明した。また慢性リンパ性白血病(B-CLL)由来細胞株においてMUM1発現とMIG発現そしてMIG受容体であるCXCR3発現が相関しており、抗MIG/CXCR3中和抗体が一部のB-CLL細胞の増殖を抑制することを見いだした。すなわちMUM1の過剰発現がB細胞性腫瘍においても増殖促進などの生物学的な意味を持っていることを明らかにした。2)t(2;11)(p11;q23)転座を有するNCU-MM-1骨髄腫細胞株を用いて11q23座の二重色FISH法による転座切断点の同定を行い、切断点近傍に位置する遺伝子としてBOB.1/Pou2AF1遺伝子を明らかにした。近傍に位置するそれ以外の遺伝子発現は認められず、BOB.1遺伝子が転座関連遺伝子であることが示唆された。しかし30例の純化骨髄腫細胞を用いてFISH法による11q23領域の転座の有無を検討したがその中には転座を有する例は認められなかった。現在アンチセンスを用いて骨髄腫の増殖や細胞死抑制への関与を有しているか否かについての検討を進めている。3)骨髄腫細胞株14株を用いて二重鎖DNA切断修復酵素群であるNHEJに関与する遺伝子変異の有無を検討した。Ku70,XRCC4の変異は認めなかったが、Ku80,Ligase4,DNA-PKcsについてはそれぞれ1株、1株、2株において片アレルでのミスセンス変異を認めた。すなわち骨髄腫細胞株の28.6%において変異を認めたわけであるが、それらがドミナントネガティブ作用を有するか否かについては末検討である。4)syndecan-1(CD138)遺伝子プロモーターを用いたMUM1発現ベクターを用いたトランスジェニックマウスの作成は種々のプロモーターを構築するもマウス形質細胞中での十分な高発現が得られず残念ながら中断している。
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