1.巨核球胞体突起形成(PPF)刺激因子の精製 われわれは、PPFを刺激する因子を正常ヒト血漿から精製・単離し、N末端のアミノ酸配列を決定したところ、刺激因子はアンチトロンビンIII(ATIII)であって、そのin vitro活性発現にはhighdensity lipoprotein(HDL)が必須であることを世界で始めて報告した。刺激因子としてATIIIを含んだHDL分画を正常ヒト血漿から精製し、以下の実験に用いた。 2.PPF刺激因子に反応する巨核芽球性白血病細胞株の選択ならびに血小板産生系の確立 巨核芽球性白血病細胞株を上述のPPF刺激因子と培養後、血小板を産生する系を確立した。まず、細胞株をマイクロウェロ内にまき、無血清下、ATIII、ATIII+HDL、ATIII+HDL+Thrombinを濃度を変えて加えた。12時間、24時間後に、産生された血小板数を測定するために、(1)CCDカメラ装着の倒立顕微鏡でマイクロウェロ内を撮影し、産生された血小板数を定量した。また、(2)マイクロウェロ内から培養液を採取し、PEラベル抗CD41抗体と定量ビーズを加え、フローサイトメトリにて定量した。ATIIIのみでは、ほとんど血小板は産生されなかったが、ATIII+HDL、ATIII+HDL+Thrombinでは、時間依存性にまた、ATIII用量依存性に、HDL用量依存性に、Thrombin用量依存性に血小板は産生された。(1)と(2)とは正の相関を示した。 3.シグナル伝達に関与するキナーゼならびにフォスファターゼ阻害剤を加え、上記の刺激因子による細胞株の反応性が阻害されるかどうかの検討 Protein kinase C(PKC)の阻害剤であるbis-indolylmaleimide、phorbol ester(TPA)、ribozymesは生理的な濃度で上記の因子による巨核球からの血小板産生を抑制したが、他の阻害剤は生理的な濃度では阻害されなかった。 以上より、このin vitro血小板産生系においてはMAP kinase、PI3 kinase、protein kinase Aなどを介したシグナル伝達ではなく、PKCが関与するシグナル伝達系を介してPPFを刺激して血小板を産生していると考えられた。
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