研究概要 |
1,Maltose-binding proteinとtransferrin inreceptor 2(TfR2)の細胞外ドメインを結合したキメラ蛋白を大腸菌に発現させ、これを抗原としてウサギに免役し、抗体を作成した。この抗体の特異性と感受性を、human TfR2を発現させたtransferrin receptor 1(TfR1)欠損Chinese hamster ovary細胞、TfR1を強制発現させた細胞、コントロール細胞をもちいて、免疫組織学的染色およびウエスタン・ブロッティングを行った。免疫組織学的には、抗体200-500倍希釈でTfR2細胞が特異的に染まった。ウエスタンブロッティングでは、1次抗体x200希釈でTfR2細胞のlysateのみに、約105kdの非常に強いバンドがみられた。これらのことから、作成した抗TfR2抗体が免疫組織学的染色およびウエスタンブロッティングにおいて、有用であることが分かった。 2、次にこの抗体を用いて、正常および血液疾患の骨髄細胞を免疫組織学的にしらべた。赤芽球系細胞が陽性に出る傾向がみられたが、骨髄系細胞と巨核球については結果が一定しなかった。臨床検体では赤白血病(AML-M6)の1例で非常に強いTfR2の発現が確認された。 3,Human TfR2の3次構造を、公表されているTfR1の構造との比較から解析し、TfR2に特異的かつ分子の表面に出ているアミノ酸配列を選んだ。これらのなかから更に同一塩基のストレッチを除外し、塩基性の分布などを参考に1つの配列に絞り、宝酒造に依頼してこの配列の合成ペプチドを作成した。架橋後、これを抗原として、抗ウサギポリクローナル抗体を作成した。現在この抗体の特異性と感受性、有用性を解析中である。 4,今後、上記二つの抗体のうち一つをペルオキシダーゼ標識し、サンドウイッチELISAの系を確立、さらに血清中のTfR2の定量を行う予定である。 5,可溶性TfR2の作成については、自然に近い糖鎖を付加するためにSf9細胞をもちいて発現させる予定であり、現在進行中である。
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