私達はこれまでに、マウス単球性白血病Mm細胞の移植性と関連して発現する新規遺伝子のcDNAをクローニングし、MmTRA1a (Mm-1 cell derived trasplantability associated gene 1a)と名付けた。 また、正常型であるMmTRA1b cDNAをクローニングした結果、Mm TRA1aは正常型MmTRA1bのN末側欠損型であった。N末欠揖型のMmTRA1aはマウス単球性白血病細胞の分化誘導に伴って発現が抑制され、正常型のMmTRA1bは分化誘導に伴い発現が誘導されることを明らかにした。さらに、ヒトホモローグのクローニングを試み、正常型であるMmTRAlbに対するヒトホモローグを単離した。正常型のMmTRA1b遺伝子産物は最近クローニングが報告された細胞膜リン脂質スクランブレースと一致する事を明らかにした。しかし、これらの詳細な性質および作用機作は不明である。そこで、本年度は以下の点にっいて明らかにした。 1.ヒト前骨髄球性白血病株細胞NB4はレチノイン酸(ATRA)処理による顆粒球への分化に伴って、正常型のMmTRA1b遺伝子発現を顕著に誘導した。 2.ATRA抵抗性NB4亜株にATRAを処理しても分化誘導もMmTRA1b遺伝子発現誘導もともに見られなかった。 3.顆粒球または単球/マクロファージへの分化能を持つ白血病株細胞HL60では、顆粒球への分化誘導物質によって有意にMmTRA1b遺伝子発現が増加した。 4.前骨髄球性白血病患者より得られた新鮮白血病細胞でもATRA処理による顆粒球への分化誘導に伴って、MmTRA1b遺伝子発現が顕著に誘導された。 このように今年度の研究では、ヒト前骨髄球性白血病細胞の顆粒球への分化に伴って正常型のMmTRA1b遺伝子が顕著に誘導されることを明らかにした。
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