マイナー組織適合抗原(以下、マイナー抗原)特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)は、HLA一致同種造血幹細胞移植後の患者末梢血より樹立可能で、CTLによっては白血病細胞を含む血液細胞のみを傷害し、免疫療法に有用である。本年度には計12例の移植患者から採血が得られ、うち日木人に多いHLA-A24を有した3例よりCTLの樹立を試みた。いずれの症例からもA24に拘束されるマイナー抗原を認識するCTLの樹立が可能であった。 まずA24拘束性のCTLを効率よく樹立するために至適な刺激細胞が必要であったため、A24遺伝子を多数のB細胞株(LCL)にレトロウイルスベクターを用いて容易に導入する系を確立した。次にこのパネルを刺激細胞として用い、どのLCLがマイナー抗原を発現しているかを迅速に検出できる系を開発した。この結果をもとに、至適なLCLを刺激細胞とし、インターフェロンγを産生するCTLをポジティブセレクション法を用いて濃縮し、CTLクローンを得た。 現在までに詳細な解析が可能であったA24拘束性CTLは3種で、うち2つは患者の白血病細胞を含む血液細胞全般を傷害したが、皮膚線維芽細胞等の非血液細胞は傷害しなかった。もう1つは患者のB細胞に特異的なCTLであった。前者のうち1つが一般集団の7割前後に発現しているマイナー抗原を認識することが分かり、現在抗原遺伝子の同定を試みている。またA24以外にB44に拘束性の血液細胞特異的なCTLが樹立された。このCTLは、詳細な遺伝子マッピングが行われた大家系より得られたLCL(CEPH細胞バンクより入手)を傷害できたため、現在リンケージ解析法にてマイナー抗原遺伝子の同定を試みている。遺伝子が判明すれば、今後その抗原決定部位のペプチド配列を用いて、ハイリスク白血病患者に対する養子免疫療法を行うことができる系を確立する予定である。
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