マイナー組織適合抗原(以下、マイナー抗原)特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)のうち、白血病細胞を含む血液系細胞のみを傷害するものは免疫療法に有用である。本年度は、昨年度に樹立したHLA-A24およびB44に拘束性の血液細胞特異的なCTLを用いて、これらのCTLが認識するマイナー抗原をコードしている遺伝子の同定を試みた。詳細な遺伝子マッピングが行われた大家系より得られたLCL (CEPH細胞バンクより入手)がこれらのCTLで認識されたため、リンケージ解析が可能であった。その結果、HLA-A24およびB44に拘束性のCTLの2つともが15番染色体のq24.5付近に存在する遺伝子を認識していることがわかった。この領域に対してマイクロサテライトマーカーによるタイピングを追加して、詳細な遺伝子マップを作成したところ、さらに領域を3.4cMまで狭めることができた。この領域に存在する既知の遺伝子に対し、その組織特異的発現、アミノ酸置換をともなう遺伝子多型の有無、多型性を含むアミノ酸配列がHLA-A24やHLA-B44に結合するペプチドモチーフを持つか否かの点について検索したところ、BCL2A1のみがその条件を満たした。ミニ遺伝子や合成ペプチドを用いた検討により、BCL2A1上の第19番のアミノ酸の多型がHLA-A24拘束性CTLのエピトープ、また第82番目のアミノ酸の多型がHLA-B44拘束性CTLのエピトープの形成に関わっていることが判明した(特許申請中)。BCL2A1はメッセンジャーRNAレベルでも血液系細胞だけに発現していた(論文投稿中)。今後それらのペプチド配列を用いて、ハイリスク白血病患者に対する養子免疫療法の臨床試験を開始する予定である(当センターの倫理委員会の承認済み)。また、さらに本年度は新たに3種類の異なったHLA拘束性のCTLが樹立されたので、現在遺伝子の同定を進めている。
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