マイナー組織適合抗原(以下、マイナー抗原)に特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)のうち、白血病細胞を含む血液系細胞のみを傷害するものは免疫療法に有用である。本研究期間中に計26例の移植患者から採血が得られ、日本人に多いHLA-A24を有した症例より重点的にCTLの樹立を試みた。A24拘束性のCTLを効率よく樹立するために、A24遺伝子を多数のB細胞株(LCL)にレトロウイルスベクターを用いて容易に導入する系を確立した。次にこのパネルを刺激細胞として用い、どのLCLがマイナー抗原を発現しているかを迅速に検出できる系を開発し、インターフェロンγを産生するCTLを濃縮することでCTLクローンを効率よく得ることができた。次に樹立したHLA-A24およびB44に拘束性の血液細胞特異的なCTLを用いて、これらのCTLが認識するマイナー抗原をコードしている遺伝子の同定を試みた。詳細な遺伝子マッピングが行われた大家系より得られたLCLがこれらのCTLで認識されたため、リンケージ解析が可能であった。その結果、HLA-A24およびB44に拘束性のCTLの2つともが15番染色体のq24.5付近の3.4cM間に存在する遺伝子を認識しており、この領域に存在する既知の遺伝子の組織特異的発現、アミノ酸置換をともなう遺伝子多型の有無、多型性を含むアミノ酸配列がHLA-A24やHLA-B44に結合するペプチドモチーフを持つか否かの点について検索し、BCL2A1遺伝子を特定した。また合成ペプチド等を用いた検討により、2つのエピトープを同定した(特許申請中)。BCL2A1はmRNAレベルでも血液系細胞だけに発現していた。今後これらのペプチド配列を用いて、ハイリスク白血病患者に対する養子免疫療法の臨床試験を開始する予定である(当センターの倫理委員会の承認済み)。
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