研究概要 |
平成14年度は13年度に引き続き腎尿細管のNaトランスポーターを中心に、腎におけるNa再吸収の機序と生理的意義についての研究を続け以下の点を明らかにした。 1.尿細管ヘンレループ上行脚太部に局在する腎特異的Naトランスポーター(BSC : bumetanide sensitive cotransporter)は発現量の変化により、Na再吸収を調節し、それが尿濃縮に影響することを平成13年度の研究で明らかにした(Kideny Int. 60:672-679,2001)。そこで、平成14年度ではリチウム中毒による腎性尿崩症モデルラットを解析し、このBSCの発現変化は病態に大きく影響するとともに、この膜蛋白発現の知見に基づき、新たな薬理効果もしくは薬物療法の検討が可能であることを証明した(Kideny Int. 63:165-171,2003)。 2.平成14年度は遠位尿細管の上皮性Naチャンネルβサブユニット(βENaC)の遺伝子解析を終了した。結果、βENaCの遺伝子変異の中には血圧への影響が否定できず、血中Na濃度にも影響していると考えられるものが見出された(Clin Exp Nephrol 6:130-134, 2002, Am J Hypertens 15:189-192, 2002)。 以上の結果から、腎尿細管においてヘンレループ上行脚ではBSCにより再吸収されたNaは水の再吸収に、その遠位のチャンネルによるNaの再吸収はNa自体の調節を介して、結果的に血中Na濃度や血圧の調節に利用される可能性が判明した。
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